母なる証明 愛情とは何か
ネタバレすると思うよ。
今日は『母なる証明』という韓国の映画を紹介します。監督はヘンテコ監督ポン・ジュノ。主演はお母さん役に韓国ベテラン女優のキム・ヘジャと、その息子役に韓流四天王でかなりのイケメンなウォン・ビンです。ヘンテコ監督ってのは、まあ前回ジョン・カーペンターのことをまともと言いましたが、今回のはマジです。正真正銘のヘンテコです。どの辺がヘンテコかっていうと、う~んと、え~っと、画が・・・。違うなあ。わかんないや。まあ感覚的なことしか言えないけど、殺風景なんだけど情緒的だったり、ユーモラスだけど突き放したり、グッと押してくるかと思ったらいっこうに来なかったり。なんていうか、一本の映画内での振り幅がエライ大きい監督。まあそうやって言葉で形容するよりも、まず観ればきっとわかります。
詳しくは→goo映画(ややネタに触る程度)
わし的ストーリー(今度こそネタバレ)
舞台は小さな町。知的障害者のトジュン(ウォン・ビン)は母親(キム・ヘジャ)と二人暮らし。トジュンはあきらかに母親なしでは生きていけないし、一方の母親も、働きながら常にトジュンを気にかけていて、要するにお互いの存在なしでは生きていけないようだ。
そんなある時、少女が死体になって発見される。その容疑者はトジュン。 「なにかの間違いだ!」 母親はそれを全く信じない。トジュンも殺したという記憶が全くない。記憶はないが、否定もできない。思い出したことと言えば、幼いころ母さんに農薬を飲まされて殺されそうになったことだ。それを聞いた母親は発狂しそうになる。そしてトジュンに、「嫌な記憶を消しさるツボに針を打つ」と促すが、今度は針で殺そうとするのかと突っぱねられる。
「ああトジュン。愛しいトジュン。あなたはきっと無実なのよ。母さんが必ず牢屋から出してあげる」 独自に捜査を薦めるうちに、新しい容疑者が浮かび上がる。それと同じに一人、トジュンが犯行に及ぶのを目撃したオッサンも出現する。無実じゃない?!でも構わない、あの子を守るため。まずは証拠を消さなければ。母はオッサンをぶち殺し、家に火をつけた。これでトジュンは大丈夫よ。
そして彼は釈放になり、新しい容疑者が逮捕されることになった。これでまたトジュンと安心して暮らせそうだ。でも母さん、トジュンが言う。
「母さん、これ忘れちゃあダメじゃないか」
そういって渡されたのは、針灸の針が入った缶。オッサンの家に忘れたままだった。え? トジュン、どうして知ってるの?あなた、ほんとは全部知ってるの? あなたはトジュン? 私が愛してたトジュンなの? 母親はバスの中で、記憶をなくすツボに針を刺し、やがて晴れやかに踊り出した。
感想
映画の冒頭で、母親が一人草原で踊るシーンが入ります。観ている側としては何だこりゃってなるわけだが、ここは冷静にいかなければいけない。こういう冒頭のトンデモシーンていうのは必ず映画のどこか(とくにラスト)に繋がってくるからです。例に出すと『パンズ・ラビリンス』(過去記事)とか。ましてやこんなヘンテコなシーン、単体で放置されるということはないので、監督の演出にしてやられた~!っていう気になりたくない負けず嫌いな人は、是非頭の隅に確実に置きながら鑑賞して下さいな(わしがそう)。
んで案の定、ラスト付近、オッサンの家に火を放った後に踊るシーンが入って冒頭に繋がるわけだけど、これ、何か思い出しませんでしたか? 青い服を着たオバサンが黄色の草原で踊る。青き衣をまといて金色の野に降りたつべし。これ『ナウシカ』なんですよ。『風の谷のナウシカ』も青き衣をまとった少女がオーム達の怒りを抑え、人間とあらゆる生物自然を愛するという言ってみれば究極の母性を描いてるわけですが、この映画でもそうなんです。息子を絶対の愛で包む母親のその究極の母性。善も悪もすっ飛ばした母親の愛。政治も社会も母性の前では幻想で、言葉や科学を超えた、女としての、母親としての証明。母性です。それがあの冒頭と後半の踊りのシーンに集約されている。息子を守ったという安堵感。達成感。
そしてラストのバス内での踊りにリンクしてくるわけですが、母親としての役割を失いかけたところで、その事実さえも気し去ってまた母性を取り戻す。その事実っていうのは、息子のスペックの大きさ。実はあたしが保護しなくてもなんともないのではという疑惑。それは全てを息子に捧げてきた母親にとって恐怖である。奥まった仕事場からも常に息子に目をやっているというシーンや、ベッドで一緒に寝るシーン、小便を処理するシーンなどからもいかに息子を気にかけていたかがわかる。それは近親相姦的とも言えなくもない。なぜなら一方的な愛ではなく、お互い依存しあって成立している関係だから。まあでもそんなエッチな感じじゃあないけどね。突き詰めてくとそうなる、ということで。
映画の脚本もきちんとしてました。個性的ではあるけど、ツボはきちんと押さえていく。やっぱ基本がしっかりしてるんだなあと改めて思う。邦画の企画モノみたいな映画(テレビ映画)とか観てると恥ずかしくて直視できないときとかありますからね。いや比喩じゃあなく、まじに。さっむいギャグとかさ~、お笑い芸人出てきて内輪ネタやるとかさ~。『ワラライフ!!』の記憶がほとんどないもん。忘れるツボ刺してないのに記憶から消えたよ。すごいね~。『ツーリスト』(過去記事)もいつか忘れるだろうと思ってたけど、まだ覚えてるからね~。それより先に忘れるってことはよっぽどだよ~キム兄(知らないけど)。もう映画撮らな・・・。
おっと、話逸れたな。はい、それから刑事三人良かったですね~。キャラ立ってますよね~。台詞もほとんどないんだけどね、あの佇まい、顔、それを引き出すカメラがいいね。映画観てるって気になるね。それにしてもポン・ジュノさん警察に恨みでもあるのかなあ。全く役立たずですよねいつも。ラストのバスの画も良いね。周りがわいわいやってる中に自分も入ってくというあの感覚。ああ、堕ちたな、という感覚。これはわしの勝手な感覚だけど、野球観戦にたまに行くんですが、外野で観てるとみんな応援団に合わせて統制のとれた応援するんですね。で、わしはそういうの嫌で静かに周囲に逆らって野球観てるわけですが、最後の最後まで負けててとんでもない逆転とかした時に、皆と同じ応援とかしたくなるんですよ。えーい、やっちゃえという。これに似てるなあと。まあ、勝手な感覚ですが。
まとめ
非常に好きな映画です。こういう振り幅の大きい映画をこの監督はよく撮るんですが、それでいて画作りや演出に非常に優れています。色んな引き出しを持っている感じです。まあ、何て言うかなあ、映画の色んな面を観せてくれる監督かなあ。さっきから同じことばっか言ってるような気がするなあ。というわけで、かなりお勧めです。っていうかこういうの食わず嫌いな人いるのかなあ。『グエムル-漢江の怪物-』がこけたぐらいだからね。こける理由がわからないけどね。こけるってことは、客が入らなかったってことでしょ? 観る価値は充分にあると思うんだけどね。トンデモ映画ですよあれも。トンデモヘンテコ怪獣映画です。
母なる証明 amazonです。
パンズ・ラビリンス amazonです。
風の谷のナウシカ amazonです。
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舞台は小さな町。知的障害者のトジュン(ウォン・ビン)は母親(キム・ヘジャ)と二人暮らし。トジュンはあきらかに母親なしでは生きていけないし、一方の母親も、働きながら常にトジュンを気にかけていて、要するにお互いの存在なしでは生きていけないようだ。
そんなある時、少女が死体になって発見される。その容疑者はトジュン。 「なにかの間違いだ!」 母親はそれを全く信じない。トジュンも殺したという記憶が全くない。記憶はないが、否定もできない。思い出したことと言えば、幼いころ母さんに農薬を飲まされて殺されそうになったことだ。それを聞いた母親は発狂しそうになる。そしてトジュンに、「嫌な記憶を消しさるツボに針を打つ」と促すが、今度は針で殺そうとするのかと突っぱねられる。
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そして彼は釈放になり、新しい容疑者が逮捕されることになった。これでまたトジュンと安心して暮らせそうだ。でも母さん、トジュンが言う。
「母さん、これ忘れちゃあダメじゃないか」
そういって渡されたのは、針灸の針が入った缶。オッサンの家に忘れたままだった。え? トジュン、どうして知ってるの?あなた、ほんとは全部知ってるの? あなたはトジュン? 私が愛してたトジュンなの? 母親はバスの中で、記憶をなくすツボに針を刺し、やがて晴れやかに踊り出した。
感想
映画の冒頭で、母親が一人草原で踊るシーンが入ります。観ている側としては何だこりゃってなるわけだが、ここは冷静にいかなければいけない。こういう冒頭のトンデモシーンていうのは必ず映画のどこか(とくにラスト)に繋がってくるからです。例に出すと『パンズ・ラビリンス』(過去記事)とか。ましてやこんなヘンテコなシーン、単体で放置されるということはないので、監督の演出にしてやられた~!っていう気になりたくない負けず嫌いな人は、是非頭の隅に確実に置きながら鑑賞して下さいな(わしがそう)。
んで案の定、ラスト付近、オッサンの家に火を放った後に踊るシーンが入って冒頭に繋がるわけだけど、これ、何か思い出しませんでしたか? 青い服を着たオバサンが黄色の草原で踊る。青き衣をまといて金色の野に降りたつべし。これ『ナウシカ』なんですよ。『風の谷のナウシカ』も青き衣をまとった少女がオーム達の怒りを抑え、人間とあらゆる生物自然を愛するという言ってみれば究極の母性を描いてるわけですが、この映画でもそうなんです。息子を絶対の愛で包む母親のその究極の母性。善も悪もすっ飛ばした母親の愛。政治も社会も母性の前では幻想で、言葉や科学を超えた、女としての、母親としての証明。母性です。それがあの冒頭と後半の踊りのシーンに集約されている。息子を守ったという安堵感。達成感。
そしてラストのバス内での踊りにリンクしてくるわけですが、母親としての役割を失いかけたところで、その事実さえも気し去ってまた母性を取り戻す。その事実っていうのは、息子のスペックの大きさ。実はあたしが保護しなくてもなんともないのではという疑惑。それは全てを息子に捧げてきた母親にとって恐怖である。奥まった仕事場からも常に息子に目をやっているというシーンや、ベッドで一緒に寝るシーン、小便を処理するシーンなどからもいかに息子を気にかけていたかがわかる。それは近親相姦的とも言えなくもない。なぜなら一方的な愛ではなく、お互い依存しあって成立している関係だから。まあでもそんなエッチな感じじゃあないけどね。突き詰めてくとそうなる、ということで。
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おっと、話逸れたな。はい、それから刑事三人良かったですね~。キャラ立ってますよね~。台詞もほとんどないんだけどね、あの佇まい、顔、それを引き出すカメラがいいね。映画観てるって気になるね。それにしてもポン・ジュノさん警察に恨みでもあるのかなあ。全く役立たずですよねいつも。ラストのバスの画も良いね。周りがわいわいやってる中に自分も入ってくというあの感覚。ああ、堕ちたな、という感覚。これはわしの勝手な感覚だけど、野球観戦にたまに行くんですが、外野で観てるとみんな応援団に合わせて統制のとれた応援するんですね。で、わしはそういうの嫌で静かに周囲に逆らって野球観てるわけですが、最後の最後まで負けててとんでもない逆転とかした時に、皆と同じ応援とかしたくなるんですよ。えーい、やっちゃえという。これに似てるなあと。まあ、勝手な感覚ですが。
まとめ
非常に好きな映画です。こういう振り幅の大きい映画をこの監督はよく撮るんですが、それでいて画作りや演出に非常に優れています。色んな引き出しを持っている感じです。まあ、何て言うかなあ、映画の色んな面を観せてくれる監督かなあ。さっきから同じことばっか言ってるような気がするなあ。というわけで、かなりお勧めです。っていうかこういうの食わず嫌いな人いるのかなあ。『グエムル-漢江の怪物-』がこけたぐらいだからね。こける理由がわからないけどね。こけるってことは、客が入らなかったってことでしょ? 観る価値は充分にあると思うんだけどね。トンデモ映画ですよあれも。トンデモヘンテコ怪獣映画です。
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